心のよりどころを失う
自分にとって,もっとも大切なものを失った時に、人は生きていく力をなくし、希望をなくし、絶望の淵に立ちます。
自らの命を絶ってしまうことさえもあります。
一年ほど前、ある女性からカウンセリングの依頼がありました。その方の娘さんは某宗教団体の信者さんで、大学を出てすぐにその宗教団体の職員として採用されました。
頭も良く、きれいな顔立ちの娘さんは、周囲の友人からは「何故そんなところに就職するの?あなたなら一流企業に簡単に就職できるのに」と不思議がられました。
しかし本人は尊敬していた教祖に対する強い信頼と信仰で、自ら希望して宗教の道を選択しました。
優秀な彼女は、ほどなく教祖の近くで仕事をするようになりました。教団の地方での講演会には必ずお供をするようになったそうです。
ところが、地方の講演会の前日に宿泊していたホテルで、彼女に予想だにしない事態が起きたのです。
教祖に呼ばれ部屋に行くと、神と崇めていた教祖は、一人の男として立っていました。戸惑いと混乱状態にあった彼女は、そこでひどい凌辱を受けたそうです。
彼女は翌朝早く東京に戻り、以後半年間、自宅にこもりうつ状態が続きました。
自分がもっとも信頼していた人、もっとも大切にしていた教え、そして何よりも、人生の全てだった信仰が心の中で音を立てて崩れ落ちてしまったのです。。
人の喪失体験には、失恋で恋人を失ったり、親の死に遭ったり、友人を失ったり、職業や地位を失ったり、いろいろな苦しみが伴います。
しかし、信仰を裏切られる苦しみは、その人の人間としての根幹や価値観すべてを失うことになるので、喪失体験としては最大のものです。
私たちは彼女の心に深く刻まれた傷を癒し、安らいだ心を取り戻すお手伝いをさせていただきました。彼女が希望に満ちた人生を歩んでいただきたいと心から願っています。
同時に、宗教者は、ご自分がいかほど尊い仕事をしているのか、いかほど多くの人たちに影響を与えているのかということを強く自覚されることを願ってやみません。そして二度とこのような悲惨な出来事が生じないよう自戒されることを願っています。
風