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心のよりどころを失う

2012年02月23日

自分がもっとも信頼していた人、もっとも大切にしていた教え、そして何よりも、人生の全てだった信仰が心の中で音を立てて崩れ落ちていました。

自分にとって,もっとも大切なものを失った時に、人は生きていく力をなくし、希望をなくし、絶望の淵に立ちます。

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自らの命を絶ってしまうことさえもあります。

一年ほど前、ある女性からカウンセリングの依頼がありました。その方の娘さんは某宗教団体の信者さんで、大学を出てすぐにその宗教団体の職員として採用されました。

頭も良く、きれいな顔立ちの娘さんは、周囲の友人からは「何故そんなところに就職するの?あなたなら一流企業に簡単に就職できるのに」と不思議がられました。

しかし本人は尊敬していた教祖に対する強い信頼と信仰で、自ら希望して宗教の道を選択しました。

優秀な彼女は、ほどなく教祖の近くで仕事をするようになりました。教団の地方での講演会には必ずお供をするようになったそうです。

ところが、地方の講演会の前日に宿泊していたホテルで、彼女に予想だにしない事態が起きたのです。

教祖に呼ばれ部屋に行くと、神と崇めていた教祖は、一人の男として立っていました。戸惑いと混乱状態にあった彼女は、そこでひどい凌辱を受けたそうです。

彼女は翌朝早く東京に戻り、以後半年間、自宅にこもりうつ状態が続きました。

自分がもっとも信頼していた人、もっとも大切にしていた教え、そして何よりも、人生の全てだった信仰が心の中で音を立てて崩れ落ちてしまったのです。。

人の喪失体験には、失恋で恋人を失ったり、親の死に遭ったり、友人を失ったり、職業や地位を失ったり、いろいろな苦しみが伴います。

しかし、信仰を裏切られる苦しみは、その人の人間としての根幹や価値観すべてを失うことになるので、喪失体験としては最大のものです。

私たちは彼女の心に深く刻まれた傷を癒し、安らいだ心を取り戻すお手伝いをさせていただきました。彼女が希望に満ちた人生を歩んでいただきたいと心から願っています。

同時に、宗教者は、ご自分がいかほど尊い仕事をしているのか、いかほど多くの人たちに影響を与えているのかということを強く自覚されることを願ってやみません。そして二度とこのような悲惨な出来事が生じないよう自戒されることを願っています。

Category: 心の話

表面のコミュニケーションと深層のコミュニケーション

2012年02月22日

心検のコミュニケーション論の特徴は、表面のコミュニケーションだけでなく深層のコミュニケーションの方法をお教えすることにあります。

カウンセラーである私自身が驚くような体験が、来談者の方に起きることがあります。

あるご婦人は、幼少期は母親の虐待に苦しんだかと思うと、病気の際には献身そのものの手厚い母親の看病をうけて育ちました。年老いた母との二人暮らしでは、母親が彼女の行動にことこまかに口を出し、すごくうるさくて困っておられました。彼女自身、幼少期の虐待の心の傷がまだ癒えていなくて、不幸の影を背負っていらっしゃる感じでした。

この方のカウンセリングでロールレタリングを使い、お母様の心と対話してただ来ました。すると、母親からの手紙を書き始めたとたん、驚くような内容が次々と出てきて止まらないのです。どうもお母さんの今の意識ではなく、深層潜在意識の中の過去世の意識が彼女の筆を通して、手紙を書き出したようなのです。そこに書かれた内容は、次のようなことでした。

彼女は千年以上前の時代にアラビアで大富豪をされていました。お母さんは第一婦人でしたが、当時のアラビアの風習で他に多数の婦人がいらっしゃったようです。第一婦人は夫を深く愛していたのですが、他の婦人に目移りがする夫に、嫉妬と独占欲で深く苦しみ、夫への恨みをもったまま自殺をしたそうです。

今世、第一婦人が母として、大富豪の夫は娘として生まれ変わりました。第一婦人だったときの恨みが虐待となり、独占欲と愛が病気のときの献身的な看病になっていたようです。綴られる文面にそうしたことが出てくるのです。本人も書きながら、びっくりしているのです。ただ、書き終わった後で、もし本当にこうした過去世があるとしたら、幼少期の経験は理解できるとおっしゃっていました。

二回目にカウンセリングにこられたときに、彼女は言われました。「不思議なことに、あの後帰ると、母がとても柔和になっており、私の行動をいちいち詮索したりすることがまったくなくなったのです。とても自由になり、嬉しいです。」と報告してくださいました。

心の深層でのコミュニケーションができると、人間関係が劇的に変化することがあります。きっとお母さんの深層潜在意識にある過去世の意識が、自分の気持ちを受け止めてもらって満足されたのだと思います。

深層でのコミュニケーションという意味の一端を、ご紹介させていただきました。

なお、この実話は来談者ご本人が人の役に立つならいくらでもお使いくださいといってくださっていたので、多少の変更をして本人が特定できないようにして紹介させていただきました。貴重な体験を提供してくださったご婦人に、心から感謝申し上げます。

Category: 人間関係の話

自分の身体と話しをする

2012年02月21日

心臓や胃袋の意識(実は内蔵の器官には独自の意識があります)と手紙のやり取りのスタイルで話しをします

先日、心検(こころけん)の授業に参加する機会があった時のことです。

内臓の意識

授業では「ロールレタリング」の実習をしました。興味深かったのは、自分の体の一部と話しをするという技法の実習の時でした。これはノートを使って、例えば心臓や胃袋の意識(実は内蔵の器官には独自の意識があります)と手紙のやり取りのスタイルで話しをします。自分で書いて、返事も内蔵の立場になったつもりで自分で書きます。

私はこの機会にと思い、最近、寝ている時にお腹にガスが溜まりやすいので、自分の腸の意識と話しをすることにしました。

、「最近、夜中にガスが溜まっているけど、腸の機能が低下しているか異常があるのでしょうか?」

、「私は至って正常です。むしろ他の内蔵よりも丈夫に出来ています。今までも支障をきたすことは無かったはずです」

「それでは何故ガスが溜まるのでしょうか?」

腸、「それは私の問題ではなく、あなたの生活の習慣に問題があります。」

「どこに問題があるのでしょうか?」

腸、「夜寝る前に寝転びながらお菓子つまんで食べているでしょう。あれをするとガスが溜まりやすいんですよ。私が働いているから病気にならないだけのことです。良い習慣をつけるようにしてください。それからたまには私の存在に心を寄せてくださいね」

私の「腸」とはそこまての話しをしてロールレタリングの実習を終了しました。

私は改めて、日夜文句も言わずに働いてくれている内蔵たちに感謝したい気持ちになりました。

いつもありがとう。

Category: 心の話

授業で感動したこと

2012年02月20日

天国の母からのインスピレーションを受けて、罪悪感の殻が割れた男性。本人の許可を得て、授業中の体験の一部を紹介します。

ベーシックコースの授業に、自分を知る心理テストがあります。このテストで、ある40代の男性は「自分をOKと思えない」、自己卑下的な傾向があることが分かりました。問題は、どこからこの傾向が出てきたかです。

深く探っていくと、小学校の頃、仲良くなるに従って人の悪口をいうものだから、誰からも敬遠されて孤立した子ども時代があったことを話してくれました。

実は、彼は友達と仲良くなる方法が知りたくて、お母さんに聞いたのです。「お母さんはなぜおばあちゃんとケンカばかりするの。なぜ悪口を言うの?」するとお母さんは「おばあちゃんと仲良くするには、人の悪口を言うしかないのよ」と教えてくれました。それで彼は、人と仲良くなるために、人の悪口を言うようにしたのです。結果は散々でした。

当時のことを思い出し、心に浮かぶイメージを描いてもらうと、自分が一人いて、離れたところに友達が二人いる光景がでてきました。彼は「一緒に遊ぼう」というのですが「お前は悪口ばかり言うから嫌だ」といいます。やがてその絵の中の彼は、「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝り続けるようになりました。絵の中の友達が「分かったから、もう謝らなくていいよ」というのですが、彼は謝り続けます。どうしてもその思いから自由になれないというのです。

そこで「天国にいるお母さんなら何と言うと思いますか」と聞きました。すると彼ははっとしたようになり、「感謝がすべてだ」といいました。お母さんはおばあさんが寝たきりになった時に、一生懸命看病し、それに対しておばあさんがあるとき「ありがとう」と心から感謝してくれたのです。その一言でお母さんの過去の恨みが全部消えたそうです。

さらに天国のお母さんからインスピレーションで「もうええ加減に自分を許しなさい」という強い言葉が、彼の胸に響いてきました。彼は涙が吹き出しました。ようやく彼は自分自身を許すきっかけがつかめたようです。その後もしばらく自分の心を絵に描いて見つめめることで、彼は根深い子ども時代からの罪悪感を卒業し、とても明るく力強い雰囲気が出るようになりました。

彼がインスピレーションを受けて涙があふれたとき、私も胸が熱くなりました。彼は「間違った母の教え」に従って対人関係で失敗したのですが、「天国の母の教え」により、そこでできた心の傷を癒し、母からの精神的遺産を受け取ったのです。彼はその瞬間、「母親と祖母の臨在を感じました」と告白してくれました。

愛は「死」で終わるのではなく、愛は死んだ後にも働き続けるのだと教えられ、胸が熱くなった授業でした。

 

 

共時性(シンクロニシティー)

2012年02月20日

「この世の中のものはすべて繋がっている。人間も動物も鉱物も互いに連動し、影響を与えあっている。」

現代科学ではうまく説明できないことが起きることがあります。

共時性

よくあることなのですが、ふとその人のことを思い出したり、考えたりしていると、その人から電話がかかってきたり、街の中でばったり出会ったりして、相手も同じようにこちらを思い出していたということがあります。これは「共時性」という現象ですが、誰もが日常の中で何度か経験していることだと思います。

これは、カール・ユングが提唱した「シンクロニシティー(意味のある偶然の一致)」で次のような説明をしています。

「この世の中のものはすべて繋がっている。人間も動物も鉱物も互いに連動し、影響を与えあっている。」

わかったような、わからないようなことだと思いますが、心検(こころけん)では、多くのカウンセリングや授業を通し、実際には人の悩みや苦しみの解決には欠かせない原理が働いていることを知っています。

特にロールレタリングという授業の中では、その場にいるはずのない方との対話ができ、相手を今まで以上に深く理解することができます。「本当はこの方はこのように考えていたのだ」ということが分かると、その方に対するいら立ちや憎しみが薄くなるだけでなく、その方への優しい感情が生まれてくることがあります。

K子さんは授業が終わり家に帰ると、さっき授業で対話をしたお姑さんが台所に顔を出し「K子さん、あんたの料理はおいしいから、また作ってほしいのよ。」「K子さんとたまにはゆっくり話しをしてみたいね。」

結婚して一緒に住んで、初めてのお姑さんからの言葉でした。

昨日まで少し意地悪なお姑さんと思っていた人が、心を開き、親しく話しができる相手に変わったのです。K子さんがびっくりして感動したことは言うまでもありませんでした。

授業の度に日常的に起きる現象ですが、他との人間関係が飛躍的に良くなる授業です。

心検(こころけん)の授業では、「共時性(シンクロニシティー)」について、さらにハイグレードコースで詳細のカリキュラムを準備しています。共時性の仕組みを知ると、心(愛情)がどんなふうに広がっていくいくのかを知り、生活の中に役立てることができます。また幅広い人生観を身につけることができると信じています。

 

Category: 人間関係の話

人の記憶

2012年02月19日

カウンセリングしていると、色々不思議な人間の心の働きに触れることがあります。潜在意識の記憶がよみがえるのです。

あるご婦人の、カウンセリング中に起きた体験です。

3歳ぐらいのとき、彼女はお姉さんを追いかけようとして、家の前の道路に飛び出しました。そこに車が来て、ぶつかり、彼女は意識を失いました。気がついたときは、病院のベッドの中でした。

そのときの状況を、カウンセリングで思い出してもらっていたときです。なぜか彼女のまぶたの裏には、自動車にぶつかって道端に横たわっている自分の姿が見えてきました。おばあさんがあわてて駆け寄る姿も見えます。お姉さんたちや近所の人も集まってきました。

やがて救急車がきて、倒れている自分を乗せて病院に運びます。そして、病院のベッドへ寝かされる自分が見えます。

仕事をしているお母さんが、病院のベッドに駆けつけました。お母さんは枕元で泣きながら、「ごめんね、私が仕事していて側にいてやれないから、あなたをこんな目に合わせたんだ。ごめんね、ごめんね。」と、何度も何度も謝っています。「こんなにも母親に愛されていたんだ」と、彼女は胸が熱くなりました。

それにしても、こんな記憶が気を失っていたはずの彼女にあるなんて、とても不思議です。自分が倒れている肉体を、やや離れたところからみているのですから、潜在意識が肉体から飛び出して、それを見ていたと解釈するほかにないと思います。カウンセリングの現場は、心の不思議な世界に、常に隣接しているのです。

Category: 心の話

心の隙間

2012年02月18日

自分はあれほど人を幸せにしたくて始めたはずなのに、何を勘違いしていたのだろうか

心検はたくさんの人が幸せになってくれることを願って、カウンセリングやセミナー、授業の開催などに取り組んでいます。

心の隙間

私やスタッフはいつもこの気持ちを忘れずに努力しているつもりなのですが、時々私は、「もっと生徒が増えなければいけない」「もっと売上が伸びなければならない」という気持ちが強くなることがあります。ところが売上を伸ばすためにどうするかと一生懸命に考えていると焦りも出るし、不安感も増すし、なかなか良いアイデアも出てきません。

先日、かねてから信頼している友人から「それは考え方が間違ってるよ。心検(こころけん)は売上を上げるために仕事しているんですか?一体何のために仕事しているのでしょうか?」と言われました。

自分はあれほど人を幸せにしたくて始めたはずなのに、何を勘違いしていたのだろうか?彼の言葉に愕然とすると同時に、とても恥ずかしい気持ちになりました。

改めて初心に立ち返り、思いをしっかり持ち始めると、今度は協力者が増えてきたり、新しい可能性が出て来るようになりました。不思議な体験です。

この経験から私は、心の中に、本来の目的とは違う、欲望や執着が出て来ると、物事がうまくいかないことがよくわかりました。そんな妙な欲が「心の隙間」になるということだったのです。

 

 

Category: 運命を開く話

心で感じ取ること

2012年02月16日

授業中に生徒一人ひとりの心と、心で対話をする理事長

このところの授業には、斉藤理事長にも参加してもらっているのですが、これが生徒さんに大好評なのです。

斉藤理事長は1年ほど前から、心の中で相手の方の潜在意識と会話ができるようになっていました。

この前の授業ではこんなことがありました。それは「過去の自分」や「未来の自分」と、往復書簡(ロール・レタリング)で対話してもらう授業でした。

理事長は生徒さんが発表している間に、その生徒さんの過去の意識や未来の意識に心の中で話しかけ、「本当はどう思っているんですか」などと聞くわけです。すると、潜在意識にある過去や未来の思いが「実は・・・」と語りかけてくるそうです。理事長は、自分が対話した内容を、後で披露してくれます。すると、生徒さんが手紙に書いていた内容とほとんど同じだったり、あるいは少し別の角度からの言葉だったりして、とてもそれが本人の役に立つので、みんな聞きたがるわけです。

私のことも、指摘してくれました。理事長の心の対話によると、私がした過去や未来の意識との対話は、実は深層潜在意識部分との会話になっていたそうです。それは私が今の自分へのアドバイスを求めたから、そうなったそうです。

心は不思議です。その不思議を実感する体験は、感動があります。この感動や新鮮な発見の喜びを、いろんな人に味わって欲しいなと、つくづく思います。

空(そら)

 

Category: 心の話

35年ぶりの再会

2012年02月16日

ひとしきり彼は自分の半生を語りながら、爽やかな笑顔で言い切りました。「ボロは着てても心は錦ですよ。こんなに気持ち良く自分の仕事に取り組むことが出来て幸せですよ」

先日、以前勤務していた外資系ホテルの同僚と何と35年振りにお会いしました。

懐かしい友

懐かしい職場のことや、仲間の消息などの話しで盛り上がりましたが、今日、私が書きたいことは違うところにあります。

彼は35年前にホテルを退職してから、世界中のホテルやレストランで仕事をして回り、その後国内の実業家の元で20年ほど仕事をしていました。そこの社長は有能な人で手広く事業展開していたのですが、半面で法律スレスレの際どい手法で財を成していました。そんな社長の身近で仕事をしていた彼は、かすかな罪悪感や自己嫌悪で何度か辞めたいと思うようになったそうです。しかし、もらっている給料を失うことや、何よりも、社長の元を去ることに対する恐怖感が、辞める決意を砕いたそうです。それはちょうど、宗教の教祖や組織に縛られ、マインドコントロールされている状態に似ていたと回想していました。辞めたいという気持ちと怖くて辞められないという気持ちの葛藤を持ちながら20年が過ぎ、心は疲れ果てて来たといいます。悩み苦しむ日々か続き、眠れない夜に外に出て歩き回ることもあったそうです。

しかし、ついに彼は会社を辞める覚悟をしました。予想通り次の就職先はなく、ハローワークで紹介された仕事は駐車場の警備員でした。現在は駐車場で車の誘導をしているそうです。

ひとしきり彼は自分の半生を語りながら、最後に爽やかな笑顔で言い切りました。「ボロは着てても心は錦ですよ。こんなに気持ち良く自分の仕事に取り組むことが出来て幸せですよ」

自分の本当の心と違う言葉や行動は、時として心身に異常をきたすことがあります。長い年月、心と行動の不一致に苦しんだ彼は、鬱(うつ)状態に近かったそうです。

正直に率直に、心と行動が自己一致した状態で生きている彼は本当に幸せそうでした。

Category: 人生の話

医療者への感謝

2012年02月10日

死んだ母を送り出してくださった、滋賀県日赤病院の医療者の対応に、胸が熱くなりました。
それは、「死体」としてでなく、「人」として扱ってくださったからです。

病院のベッドで母が死んで、死亡診断書が書かれ、いよいよ「死体となった母」を送り出す仕事が始まった。そこで目にした医療者の方々の対応には、胸が熱くなった。

「ごめんね、気持ち悪かったでしょう。管をはずすからね。」

看護婦さんは、「母」に声をかけながら、差し込まれていた何本もの管を取り外していった。

「少し横向けるからね。苦しいかもしれないからごめんね」

生きた母に対するように、母の「死体」に向かって話しかけながら、作業が進む。

一通り終了した後、若い男性の医療者の方が、母の手を取って、しばらく10分以上もじっと母を見つめながら寄り添ってくださっていた。まるで生きている人に対するように。一人にしたら寂しがるから、手をとって付き添ってくださっているのだ。

私は胸が熱くなった。彼らは紛れもなく「母」を送り出そうとしているのであり、「死体」を送り出そうとしているのではなかった。

一階に降りて、母の遺体を搬送車に積み込んだ後、立ち会ってくださった5人の医療者が、車に向かって深々とお辞儀をしてくださった。母の尊厳に対して、礼を尽くしてくださる心が伝わってきた。私は母の手を握りながら、後ろを振り返って深々とお辞儀をした。

「こんな温かい病院で死ねてよかったね」

私はそっと心の中で母にささやいた。あらためて、滋賀県の日本赤十字病院の皆様に感謝申し上げます。